サンケン技報

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2019年11月号(vol.51)

No. 論文 著者
1 MD6721 を用いたPSR 制御による高機能LED 調光の実現
Advanced LED-Dimming Function: PSR Control Method by Using MD6721
趙 志涵
林 鼎傑
鄭 明杰
林 鵬遠
近年、一次側(PSR)制御電源は、材料(BOM)コスト削減や長寿命といった特徴からますます需要が高まっている。 また、LED照明制御の分野では、軽負荷時やLED負荷のばらつきによる出力電流精度が課題となっている。 本稿では、高機能LEDドライバ向けに設計されたMD6721を用いて、高度なPSR制御アルゴリズムを構築し、 広い負荷領域において高精度な出力電流制御を実現したので報告する。
2 デジタル制御による電流モード電流共振型電源の開発 古越 隆一
大竹 修
趙 湘熙
 SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な世界」を実現するために、経済と環境のバランスの取れた社会を目指すため国連で採択された目標である。 これらに対して、当社ではブリッジレスPFC制御と全波電流共振電源制御を1 パッケージで制御可能な、デジタル制御電源IC「MD6752」を開発した。 ブリッジレスPFCと全波電流共振方式は、高効率な電源システムである。 このシステムに対応した「MD6752」は、制御回路に半導体微細化技術とデジタル制御化を進めた新しいソリューションで、電源の高効率化と部品削減, 小型化が可能となる。
3 低電圧大電流POLコンバータの過渡応答特性改善のための近似的2 自由度制御アルゴリズムの応用 下川 宗一郎
樋口 幸治
中村 勝
サーバや情報通信機器などに用いられているFPGA 等のLSI は、半導体プロセスの微細化に伴い高速化および高集積化が進む一方で, 低電圧大電流化が進んでいる。 これらのLSI に電源を供給するDC-DC コンバータに求められる電源仕様は厳しくなっており、従来から広く使用されてきたPID制御では、 高度化する電源要求に対応するのが難しくなっている。今回、筆者らは、デジタル制御方式特有の制御方法である2自由度制御方式を用いることで、 負荷急変特性とスタートアップ特性の両方の特性を良好に保つ設計を実現した。 本報告では、高性能な電源特性を得るためのデジタル制御電源コントローラの設計方法について紹介する。
4 過負荷対応SiC モジュール 谷澤 秀和
総合科学技術・イノベーション会議主導で進められたSIP(戦略的イノベーション創造プログラム) 「次世代パワーエレクトロニクス/SiC次世代パワーエレクトロニクスの統合的研究開発」の中で、SiCパワーデバイスを用いた電力変換器設計技術および、 高温実装技術の開発を行った。サンケン電気を含む同じ技術課題を有する民間企業と産業技術総合研究所がインホイールモータを想定したSiCパワーモジュールを開発した。 本稿ではその成果の中からで重要となる電力損失評価技術および、実装技術を紹介する。 また、さらに作製したモジュールの過負荷耐量向上に関して測定結果を示す。
5 1200V-SiC-MOSFET の開発 熊倉 弘道
エコ・省エネに対する市場要求は年々高まり、電源機器やインバータなどの用途において、低損失な半導体デバイスの実現が望まれている。 当社は、ソリューションの一つとして、GaNおよびSiCを用いた化合物パワーデバイスの開発を進めている。 近年、SiC-SBDはすでに普及されており、SiC-MOSFETは電気自動車のメインインバータへ採用され、普及の兆しを見せている。 さらなる市場拡大のためには、高価なSiC材料にとって単位面積デバイス特性の改善が不可欠である。 そこで1200Vトレンチ型SiC-MOSFETの開発において、ゲート酸化膜工程を調整することで特性改善を実現したので報告する。 また、今後の開発世代における技術改善と性能向上での見通しについても紹介する。
6 パッケージ技術ロードマップ 吉崎 茂雄
当社は白物家電用途等の高圧モータドライバの製品開発に力を入れている。この製品は国内外での評価も高く、高シェアを維持している。 しかし、市場競争は激化しており、シェアを維持拡大していくためには、さらに市場ニーズに合った製品化を行っていく必要がある。 その中でも製品の価値を左右するパッケージング技術はロードマップに基づいた開発を行っておりその内容を述べる。
7 白物家電用モータドライバIC SIM6890Mシリーズの開発 前川 祐也
陳 相鎬
近年、新興国の経済発展に伴い世界のエネルギ需要が拡大を続けており、エネルギ利用の効率化は世界共通の認識となっている。 白物家電市場においても世界的に急速な省エネ化の動きになっており、これまで非インバータであった製品もインバータ化が進んでいる。 電圧事情が悪く、電源電圧変動の大きい地域でもインバータ化製品が使用されるようになり、モータドライバICに対しては、電源電圧変動時でも破壊しないよう 高耐圧化の需要がある。また、エアコン、冷蔵庫においては、設定温度到達時間を短縮するため、より大きなパワーでモータドライバICを駆動するトレンドがあり、 熱破壊を防止するため、高精度な温度モニタ機能の要求がある。以上の市場要求を満たすべくSIM6890Mシリーズを開発した。 SIM6890Mシリーズでは、ICに内蔵する出力パワーMOSにSJ-MOSを採用することで市場要求である600V耐圧品をラインアップした。 制御部のMICは、従来技術のMIC内温度モニタ機能に対して設計変更をすることで、高精度のパッケージ温度モニタを実現した。 また、MICは最新の微細化プロセスを使用し、チップサイズのシュリンクを行っている。
8 EV/HEV 降圧 DC/DCコンバータ用ダイオードSZ-E10シリーズの開発 清水 公基
EV/HEV用DC/DCコンバータの二次側整流ダイオードとして、150Vの高耐圧ラインアップSZ-E10シリーズを開発。 開発品は既存品同様、低損失であることと高い繰り返しアバランシェ耐量保証が求められている。 高耐圧化による損失の増加を低減させるため、通常のSBDよりも特性のトレードオフが良いトレンチSBD構造を採用。 高い繰り返しアバランシェ耐量を得るために既存素子設計から外周構造を見直すことで耐量アップを実現した。 また、既存パッケージSZ-10 から内部構造の見直しも行い、大容量パッケージのメリットである高い放熱性を従来よりも得られる構造を開発した。
9 電源回路高速整流用低ノイズFRD CTXRシリーズの開発 南野 洋平
白物家電の電源部に搭載されているPFC回路での高周波整流において、既存のFRDではリカバリ時のピーク電流が大きく、 リンギングが発生しノイズによる誤動作などの悪影響が懸念されるといった問題がある。 これらの問題を解決できるスイッチング特性に優れた低ノイズFRDとして、FMXR-1206Sを開発したが、パッケージはTO-220Fであり、 定格電流としては20Aのみのラインナップであるため、更なる大電流を要する高出力のPFCに対しては搭載困難という課題がある。 この課題を解決するために、チップ面積を拡大した低ノイズFRDを大電流用の汎用パッケージであるTO-247に搭載した、CTXRシリーズを開発した。
10 高機能マルチ出力パワーマネジメントIC MD6801の開発 中野 利浩
中村 勝
近年、車の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に関する技術開発が盛んにおこなわれている。ADASや自動運転システムは、カメラやLiDARなどのセンサ類や、 ロケータ、ECUなど数多くの要素によって構成されており、そこで使用される電源には、要素ごとに様々な特性要求がある。 また、各要素も通信、制御マイコン、メモリ、センサなどの部品で構成されており、電圧の異なる複数の電源が必要となる。 さらに、車の電子制御化にともない、機能安全規格(ISO26262)への対応要求も増加傾向にある。 そこで、プログラマブルなデジタル制御電源と、パワーMOS内蔵のアナログ制御電源を混載したパワーマネジメントIC MD6801を開発し、 マルチ出力電源ボードによる動作評価をおこなったので報告する。
11 高速リカバリタイプ SJ-MOSFETプロセスの確立 大森 寛将
崔 正鉉
近年、電子機器は小型化、大電流化、高速化の要求を受け、搭載されるデバイスはさらなる高性能化を求められている。 その中で高耐圧素子であるスーパージャンクションMOSFET(以下、SJ-MOSFET)は、民生、産業など多岐分野にわたり採用されている。 SJ-MOSFETは耐圧とオン抵抗のトレードオフを改善し、オン抵抗を大幅に低減できる。 しかし、インバータ回路のように寄生ダイオードを積極的に使用する場合は、その特徴的な構造からリカバリ特性が悪くスイッチング損失を悪化させる。 そこで当社は独自のプロセス技術により、リカバリ特性を改善したSJ-MOSFETプロセスを確立した。
12 リフレクタ付き1.6×0.8mm LED の開発 星野 匡紀
渡邉 英之
自動車の計器類やスイッチは、安心安全な運転をサポートする機能的な部品であるとともに、顧客の購買意欲を駆りたてるため、 デザイン性の強い部品としての側面をもつ。 多様化したデザインに対応するため、LEDには小型化、高光度化が求められる。これまで、標準的な小型パッケージとして、広く使われてきた1.6×0.8mmチップLEDは、 放熱性、配光特性に課題があり、高光度化が難しかった。 そこで、リードフレームを用いたフラットLEDの技術を発展させることで、1.6×0.8mmパッケージで2000mcd級の高光度LEDを開発したので報告する。
13 小型汎用UPS SMU-HGシリーズの開発 大澤 正美
田嶋 肇
鯨井 良和
小型UPSはIT 機器、POSシステム、ATMからデータセンタ、公共基幹システムなど幅広く使用されている。 この市場で好評を得ているパワーマルチプロセッシング方式を採用したSMU-HA/EAシリーズの後継モデルとして、新たにSMU-HGシリーズを開発した。 本機は、液晶ディスプレイを搭載し視認性・操作性を大幅に向上させるとともに、フィンガープロテクト機能付きコネクタの採用により、 安全なバッテリユーザー交換を可能としている。構造面では一方向組立構造にすることで作業性を改善させ組立時間を大幅に短縮している。
14 リチウムイオンバッテリを使用した屋外用無停電電源装置の開発 吉岡 貴生
藤井 隆司
我が国では、過去より自然災害が多く、その対応に追われてきた。そのため、近年では災害に強い国造りをするために「国土強靭化」に取組んでいる。 本取組みの一環として、CCTV(Closed-circuit Television)用途向けの屋外用UPSを開発した。 災害発生時には避難を要する場合があり、その判断を行うためにはCCTVによる各地の状況確認が必要となる。 そのため、電力インフラが麻痺した場合(停電が継続した場合)でもCCTVを動作可能なように、長時間バックアップ可能な電源が必要となる。 リチウムイオンバッテリを採用した本装置は、これに寄与するものであり、その開発結果を報告する。

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