サンケン技報

サンケン技報は、省エネルギー社会を支えるサンケングループの最新技術や製品を紹介する技術論文です。
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2021年11月号(vol.53)

No. 論文 著者
1 ものづくり開発センター 大畑 典久
自動車の電動化による環境対応とDX化を追い風にパワー半導体の需要は今後高まる。 その中で成長を続けていくためには利益率の高い新製品を効率よくリリースする必要がある。 新製品の開発効率を上げるためにものづくり開発センターを設立して、サンケン電気開発機能の再構築をおこなった。 新たな開発環境の構築と働き方の推進により、ものづくり開発センターで確立した開発効率向上を目的としたプラットフォーム技術 SPP (Sanken Power-electronics Platform) を活用し、開発サイクル1/2、ライン生産性2 倍を実現する。
2 白物家電用モータドライバIC SIM2-151の開発 前川 祐也
境 春彦
近年、白物家電製品向け高圧三相モータドライバICに対し、小型化、高品質化、高効率化のニーズが益々高まっている。 それら市場要求を満たすべくSIM2-151を開発した。 SIM2-151では高放熱を実現できるDirect Bonded Copper (DBC) 基板と高電流密度化したField Stop IGBT (FS-IGBT) を 採用することで、放熱性能を損なわずにパッケージサイズの小型化とパワー素子の低損失化を実現した。 また、端子数および端子配置を最適化し、周辺基板パターン面積の削減を実現しつつも、高電位差間の端子間距離を確保する 相反する市場要求を実現した。その他に差別化となる保護機能強化もおこない、特にエアコン・コンプレッサ駆動に適した製品となっている。
3 Digital制御IPMの開発 稲垣 友和
内藤 裕也
李 維哲
白物家電の中でも特にエアコンは、環境規制を受けてモータのインバータ制御化が進んでいる。当社は室内ファンモータ向けに制御 部を内蔵したモータドライバICを市場に提供し、機電一体モータの組立に貢献してきた。 近年はインバータ制御化のさらなる伸長で、エアコンセットメーカ自身が駆動部を自社開発することもある。 従来は、高効率化や高調波規制に対応したパラメータ調整をモータメーカ―が実施し、多品種のモータ展開をはかっていた。 今後増えると見込まれるセットメーカーからの各種パラメータの調整要求に対して、1つのモータドライバICで、 それらの調整を容易に実現可能としたDigital制御IPM (SIM2652M) を開発したので報告する。
4 SAM265M30AA1・50AA1の開発 髙山 雄基
浅見 亮範
小野 治
近年、自動車、産業機器市場では高電圧大電流モータドライバの需要が高まっている。 今回、最大電圧650V、最大電流30A・50Aに対応し、IGBT、Diode、ゲートドライバICなど必要な部品を1つのパッケージに搭載したIPM、 SAM265M30AA1およびSAM265M50AA1を開発した。 前モデルであるSAE6500シリーズよりパッケージサイズを30%縮小、絶縁距離確保、各品質要求へ対応した。 サンケン電気独自のプラットフォーム開発プログラムであるSPP (Sanken Power-electronics Platform) を適用することで、 開発効率向上をはかり、同パッケージで複数の製品展開を実現した。
5 デジタル制御によるトーテムポール型PFCの開発 古越 隆一
大竹 修
趙 湘熙
文 正松
SDGs (Sustainable Development Goals) は「持続可能な社会」を実現するために、 経済と環境のバランスの取れた社会を目指すため国連で採択された目標である。 これらに対して、当社ではトーテムポール型ブリッジレスPFCの制御が可能な、デジタル制御電源IC「MD6753」を開発した。 トーテムポール型ブリッジレスPFCは、従来方式と比べて高効率な電源システムである。 このシステムに対応した「MD6753」は、制御回路が半導体微細化技術とデジタル制御化を進めた新しいソリューションで、 電源の高効率化と部品削減、小型化を可能にしている。
6 特殊色LED(低誘虫・フォトリソ用)の開発 佐藤 充孝
照明業界は発光効率という競争軸から新たな付加価値を模索している。 当社は蛍光体技術を応用することによって、低波長域を低減ないしカット (大幅に低減) した、特殊なLEDを開発した。 しかし、このようなLEDは世の中に類似品も採用事例もなく、理論だけでは受け入れられないのが実情で、 具体的な検証データと併せて提案することが必要となる。 そこで、このLEDの有用性を「誘虫性能」と「フォトリソ工程への影響」という2つの視点にて確認を試みた。 その結果、一定の「低誘虫性能」および「レジスト剤への影響低減」を示唆する成果が得られたため、ここに報告する。
7 車載用DC/DCコンバータIC MD4010の開発 櫛田 拓己
加藤 淳一
戸張 正博
近年の自動車は2021年11月から販売される新型国産車に対し自動ブレーキ義務化が導入されるなど 先進運転支援システムや自動運転の進展が著しい。 それを実現するためにはカメラ、LiDAR (Light detection and Ranging)、ロケータ、ECUなどが必要になる。 これらのECUに搭載しているマイコンは微細プロセス化が進んでおり低電圧で動作するものが増えている。 さらにマイコンの高機能・高周波化が進むことで負荷電力が増加している。 ECUに搭載する電源ICにも、負荷電力増加への対応が必要となる。 自動車用規格に対応するために高い入力耐圧が必要となることや機能安全規格への対応要求も増加している。 こうした要求に対応するため車載用DC/DCコンバータIC『MD4010』を開発した。
8 次世代1200V耐圧BCDプロセスを用いたMICの開発 内藤 裕也
近年、自動車、産業機器市場では高電圧大電流モータドライバの需要が高まっている。 今回最大電圧1200V、最大電流50Aに対応するために、1200V高耐圧BCDプロセスであるSG7UHVプロセスを用いたMIC (Monolithic Integrated Circuit) を開発した。 デザインルール0.25μmの900V第7世代BCDプロセス (SG7HVプロセス) をベースとしたSG7UHVプロセスは、 1200V化した高耐圧デバイス以外は最小限の変更にとどめている。 これにより、過去の設計資産を有効活用することが容易になっている。
9 40V/100V VFP-MOSFETの開発 近藤 太郎
田中 文悟
近年、パワー電子機器には高効率が求められている。このニーズを満たすため、機器の高速スイッチングによる高効率化が進んでいる。 しかし、高速スイッチングは、主回路の電圧および電流のサージを増大させ、EMI (電磁干渉) の主要因となる。 今や機器から発生するノイズは無視できなくなっており、EMI対策は非常に重要となっている。 サンケン電気ではノイズの主要因となるMOSFETの低ノイズ化に着目し、サンケン電気が独自開発した技術を用いて、 EMIの原因となるスパイク電圧やリンギングノイズの低減を実現した。 本稿ではEMIの抑制に優れた効果を発揮するVFP (Vertical Field Plate) -MOSFETの開発状況について述べる。
10 1200V FS-IGBTの開発 松田 成修
近年、カーエレクトロニクス分野 (業界、製品等) の進化は目まぐるしく、エレクトロニクス製品の搭載はますます増加傾向にあり、 それを支えるのが車載用半導体素子である。当社では、車載用半導体素子として、自動車や自動二輪車に使用される、 点火コイル駆動用としてTO252パッケージに搭載した400V、450VのディスクリートIGBT製品DGUシリーズ (DGU4015G、DGU4020GR、DGU4520GR) を量産中である。 エンジンの熱効率向上の市場要求に応えるべく、IGBTの耐圧アップを検討した。 今回の500V IGBT開発では、高耐圧においても、きわめて安定した耐圧温度特性、低飽和電圧で十分な自己クランプ誘導スイッチングエネルギー耐量の確保について 検討をおこない、市場要求を満たす特性を実現した。

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